第42回穴子の話

梅雨の候から夏にかけて美味しくなるものの中に「穴子」があります。ウナギもこの時期、最高ですが穴子も脂がのってきて、やわらかく口の中で溶ける感じがあります。
当店では穴子を背開きにして、骨とキモなどのワタを取り除き、良く皮目のぬめりを落としてから「煮ザル」という穴子専用のザルにきれいに並べて煮くずれしないよう、じっくり煮上げます。

当然そのままでも大変やわらかいのですが、お客様の好みによって皮目を焼いて、にぎってお出ししています。煮穴子のつまみも玉子ときゅうりを供して煮つめを付けて出しています。ワサビ好きな方にはワサビでさっぱり召し上がっていただいています。
そして、仕込みの時に出る骨とキモですが、骨はカリカリに干して油で揚げ、「骨せんべい」として、キモは酒とショウガで煮て、酒の肴としてお出ししています。「数が少ないので、その時あればですが…」
是非、皆さんもこの暑い夏を穴子で乗り切ってはいかがですか？お待ちしております。

私も35年余り、この仕事に携わりまして沢山の諸先輩から色々お話を伺ってまいりました。その中には大変為になる話も多くありました。そんな話を少しずつ打ち明けたいと思います。

「すべての人に明日がある
　　　　　有る事難き（あることがたき）　明日がある」

これは25年位前、私が店をまかされた頃のお客様が良くおっしゃっていた言葉です。当時27～28歳の私は「ピン」とは来ませんでしたが、最近はこの言葉の重みが大変良くわかる様になりました。明日なんて当たり前に来ると思っていて、寝れば黙っていても朝が来ると思っていました。が、色々なお客様のお付き合いの中でこの朝（明日）を迎えることの出来る幸せを痛感すると共に、大切に今日一日を過ごそうと思い始めた次第です。ハイ!!
この言葉をいただいたお客様には大変感謝しております。