第45回 新米の話

今年も新米の時期を迎えました。 鮨の生命はシャリにあると言っても過言ではないほど、シャリの出来・不出来によって「うまい」「まずい」が左右されます。元来、鮨人は古米を使用する事を基準としていたそうです。しかしながら、なかなか一年を通して米をうまく炊く水加減が難しく、今では新米と古米を混合して、なるべく安定した米で炊くようになってきました。米は、やはり新潟、東北地方が美味しいようです。東北米は概して、米粒が大粒から中粒で、新潟米は割と小粒です。鮨米は中粒から大粒が好まれます。
精白米の良し悪しの見分け方も親方、先輩から教わったものです。良いものは手のひらに握ってみて、しっとりとした感触があるもので精白米してから時間が経っておらず、良い米です。カリカリ感があるものは時間が経っているので、良くありません。やはり米は粒が揃っていて砕米や未熟米がない、瑞々しい透き通った感じの米を選べと教わったものです。
皆さんも新米を買ったら、確かめてください。そして新米に感謝しましょう。
「新米の香りは青くさく、古米の香りはひねくさい。」
これは鮨職人になって教わった言葉で、先人からの言い伝えだそうです。

「脚下照顧（きゃっかしょうこ）」

これはもう一度、足元をしっかり見つめ直せという言葉です。長年商売をしていますと、ついつい調子に乗ってしまうことも多々あります。そんな時、この言葉を思い出して「しっかりやろう」と思います。今、当店の壁に書いて飾ってあります。