第17回　「三尺の箸（はし）」と「利久箸（りきゅうばし）」　

皆さんはこの話をご存知でしょうか？
仏教説話なのですが、たまたま本を読んでいて心に残ったので、ちょっと紹介します。

悟りを開いていない者と開いた仏が、三尺の箸を使って食事をする話です。
前者はいわゆる餓鬼・畜生の者たちです。彼らは向い合わせに座って、三尺の箸で目の前の料理をつかもうとしています。しかし、三尺（約1メートル）もある箸ですから、なかなかうまくつかめず、つかめても口に入れることができません。皆いらだち、ケンカが始まり修羅場と化してしまいます。
一方後者は天上界の仏様方です。彼らは自分の箸でつまんだ食べ物をお向いの仏様の口へ運んでいます。当然食事はスムースに進んで笑みをたたえ、穏やかな食卓です。

千 利久は客人をもてなす時、赤杉を削って箸を作り、これをぬらして出したと言います。杉の香りが漂い「君がために」の心配り、こよなく人を愛し、その時を大切にした一期一会の精神です。
この利久箸は真ん中が平で両端が細くとがっています。一方は自分のため、もう一方は神様が頂くためだそうです。

三尺の箸も利久箸も自分よりも他者を思いやる心が大切と教えてくれています。
皆さんも食事をする時、箸を持ったならば多くの思いが込められた食べ物に感謝して二本の細い箸でしっかりつまんで頂きましょう。
相手の口へ運ぶ優しさを持って！！